菌類生態学研究室のご紹介
私たちは卵菌類の分類学的研究を基礎として、自然生態系や里地里山における卵菌類の分布調査による環境評価の試みや、卵菌類による植物病害の発生生態を研究しています。研究室に保管されている遺伝資源を活用して、病原菌に特異的な検出法・定量法を開発し、農業用水や栽培施設等でモニタリング調査を行っています。また、病原菌の遺伝的類縁関係から伝染経路を推定し、科学的根拠に基づいた防除対策を提案しています。
施設利用・共同研究について

当研究室(生態系微生物分析室)の設備などを利用したい方は、生態系微生物分析室施設の使用に関する要項を御一読のうえ、施設使用申請書をご提出ください。また、当研究室では卵菌類[Phytophthora 属菌、Pythium 属菌(広義)、Phytopythium 属菌、Aphanomyces 属菌]の保存菌株を広く活用するため、共同研究を募集しています。種の同定、検出法の開発、菌株やDNAの分譲などお気軽にご相談ください。研究開始前に共同研究申請書のご提出をお願いします。
- 生態系微生物分析室施設の使用に関する要項 [PDFファイル](2024.04.01)
- 施設利用:施設使用申請書 [Wordファイル](2024.04.01)
- 共同研究:共同研究申請書 [Wordファイル](2024.04.01)
各申請書の提出先:日恵野 綾香 E-mail:hieno.ayaka.h9(アットマーク)f.gifu-u.ac.jp
生態系微生物分析室からの公開資料
菌株情報DB は研究室の菌株ライブラリと卵菌類の種情報のデータベースです。当研究室から分譲可能な菌株の検索だけでなく、塩基配列を入力して種の基準菌株やそれに準ずる菌株との相同性を調べるBLAST解析ツールとしてもご利用いただけます。
Gifu University Culture Collection (GUCC)

Phytophthora 属菌の基準菌株:272種/ITS、cox1 99%、β-tubulin 90%、LSU、cox2、Ypt1、tigA、EF1a 70% 登録完了
Pythium 属菌(広義)の基準菌株:199種/ITS、cox1 95% 登録完了
分譲可能な菌株:約480菌株
- Phytophthora 属菌 P. asiatica、P. cactorum、P. capsici、P. castaneae、P. chrysanthemi、P. cinnamomi、P. citricola、P. citrophthora、P. cryptogea、P. drechsleri、P. fragariaefolia、P. gregata、P. megasperma、P. melonis、P. nemorosa、P. nicotianae、P. palmivora、P. pseudocryptogea、P. tentaculata
- Pythium 属菌(広義) P. aphanidermatum、P. aquatile、P. arrhenomanes、P. catenulatum、P. coloratum、P. dissotocum、P. graminicola、G. heterothallicum、G intermedium、G. irregulare、G. mamillatum、P. myriotylum、P. oligandrum、G. paroecandrum、P. periilum、P. periplocum、G. polymastum、G. rostratum、E. senticosum、G. spinosum、G. splendens、G. sylvaticum、G. takayamanum、P. torulosum、G. ultimum、G. uncinulatum、E. undulatum、P. vanterpoolii
- Phytopythium 属菌 P. chamehyphon、P. cucurbitacearum、P. helicoides、P. vexans
- Aphanomyces 属菌 A. cladogamus、A. iridis 他
[最終更新:2025.11.07]
防除マニュアル では卵菌類による植物病害の防除のための手引きを公開しています。
- サトイモ疫病対策マニュアル
- Phytophthora 属菌検出マニュアル
- シーケンス解析のためのトラブルシューティング
- トルコギキョウ水耕栽培における水媒伝染性病害対策マニュアル
- 養液栽培における高温性水媒伝染病害の安全性診断マニュアル
- イチゴ炭疽病・萎黄病・疫病感染苗検査マニュアル
YouTube では遊走子の顕微鏡動画を配信中です。新着おすすめ動画はこちら。
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卵菌類ってどんな微生物?
卵菌類は胞子に鞭毛をもつ菌類です。この胞子は「遊走子」と呼ばれ、2本の鞭毛を使って液体のなかを遊泳することができます。栄養体は糸状であり、かつてはツボカビ類やサカゲツボカビ類とともに真菌門の鞭毛菌亜門に分類されていましたが、遺伝子情報によると卵菌類は褐藻(コンブやワカメ)や珪藻に近縁であることが分かり、現在はこれらとともにストラメノパイルというグループに分類されています。ストラメノパイルの共通祖先は紅藻が二次共生した光合成生物であったと考えられています。ところが卵菌類のゲノムにはプラスチドの痕跡がなく、藻類由来と考えられる遺伝子からも共通祖先に関する決定的な証拠はみつかっていません(Wang et al., 2017)。
卵菌類は湿潤な環境を好みます。日本のような温帯モンスーン気候は生息場所として適しており、これまでの分布調査の結果からも国内の卵菌類の多様性は高いと考えています。私たちの研究室は世界的に希少なクレードに属する疫病菌 Phytophthora lilii(発見当時は日本固有種)を報告しています(Rahman et al., 2015)。また、2017年と2018年に実施された国内外の研究者による共同調査からも数多くの新種が報告されました。実際に調査をしていると「海外で報告された種が国内にも生息していた」という場面はそれほど珍しくありません。
卵菌類のなかには植物に病原性をもつものがいます。最も有名な病原菌は19世紀にアイルランドの大飢饉を引き起こしたジャガイモ疫病菌 Phytophthora infestans です。樹木病害としては1990年代中頃から欧米諸国の自然生態系を破壊しているサドンオークデス病菌 Phytophthora ramorum が知られています。卵菌類による病害の発生は環境に大きく影響されます。高品質・高収量が期待される水耕栽培では根のまわりが過湿になりやすく、新たな卵菌類病害の発生が増加しています。
里地里山を健全に保つことで農林業の生産性を向上させるだけでなく、さまざまな生態系サービス(生物多様性の保全、炭素貯留、水源涵養、防災など)を将来にわたって享受できるようにすることが重要です。当研究室ではこのような背景から、国内に広く生息する卵菌類がどのように病原性を進化させてきたのか、どのような条件で病害をもたらすのかを明らかにしようと試みています。